映画列伝7 激突!

今回は、スティーヴン・スピルバーグの名作「激突!」を紹介。

 

◆あらすじ

セールスマンであるデイヴィッド・マンは、仕事のため車でカリフォルニアへ向かっている。

ハイウェイに差し掛かり、走行スピードが遅い大型トレーラーを追い越した。するとその直後、大型トレーラーはマンの車を執拗に猛追し、煽ってきたのである。

さらにトレーラーの行動は過激になってゆき、列車が通過中の踏切にマンの車を押し込もうとしたり、警察に通報しようとするマンを電話ボックスごと轢こうとするなど、明確な殺意をあらわにしてきた。

マンはトレーラーに不利な峠道へ逃げる。

ところが、マンの車は白煙を吐きオーバーヒートしてしまう。

大幅に馬力が落ちてしまった車で逃げ切ることは難しい。マンは、トレーラーとの決闘を決意したのであった。

 

 

◆特徴タグ

・ハラハラドキドキ

見えない敵の恐怖

 

 ◆感想と評価

 

シンプルなストーリーながらも、巧みな演出によって手に汗握るカーアクション映画。

トレーラーの運転手の姿が終始見られないため、あたかもトレーラー自体が生きた”怪物”かのような、迫力と不気味さを演出することに成功している。

この映画はスティーヴン・スピルバーグ出世作となった。

 

◆オススメ度:★★★★★★★

激突! (字幕版)

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映画列伝6 バタリアン

今回は、ダン・オバノンの名作バタリアンを紹介。

 

◆あらすじ

アメリカはケンタッキー。

とある医療会社で働くこととなったフレディは、同僚のフランクから、軍の移送ミスによって倉庫にゾンビが保管されている事を知らされる。

2人でゾンビの入った容器を叩いてみると、突然ガスが噴き出した!

なんとガスは“死体を蘇らせてゾンビ化させる”というガス「トライオキシン245」だったのだ!

まずは保管されていた死体がゾンビ(黄色いおじさん)となり、フレディとフランクは社長のバートを呼んで、3人がかりでなんとかゾンビを取り押さえる。しかし、いくら切り刻んでも奴は動いとるぞ!

バートはゾンビを”完全処理”するべく、近所で葬儀屋を営むアーニーに頼んで焼却することに。

しかし、煙突から立ち昇った煙は雨雲とカップリングし、墓地に染み込んだ雨水で死体が次々とゾンビ化していくことに。

 

そして身内からもゾンビが現れるやらなんやらでもう大変!

 

◆特徴タグ

スプラッターコメディ

極度ゾンビ化しなさい

 

 ◆感想と評価

コールタール漬けにされていた「タールマン」、上半身だけの老女ゾンビ「オバンバ」など、ゾンビに個性的なキャラ付けをした点は、ゾンビ映画史上初の試みといって良い。

また、脳を破壊したり燃やせば殺せる通常のゾンビと違うため、従来の方法では倒すことが難しい設定となっている。

ちなみに余談だが、「オバタリアン」の由来でもある。エヴァンゲリオンは違う。

 

◆オススメ度:★★★★★★☆

 どこか愛着のわくゾンビたち。ライトなスプラッターコメディなので是非。

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ドラマ列伝1 私立探偵 濱マイク

今回は、 林海象原作の名ドラマ「私立探偵 濱マイクを紹介。

◆あらすじ 

横浜の私立探偵、濱マイク。皮のコートとサングラス、マニキュア、ラバーソウル、指輪、ピアスなど、一見まとまな探偵には見えないが、実際まともじゃない。

探偵事務所の他の面子は、マイクの年の離れた妹で予備校生、。掃除のアルバイトのみるく。友達想いで、少年時代に横濱特別少年院で知合ったノブ忠志や幼馴染の丈治などとずっと関係が続いている。

基本的に依頼はこなすものの、つい情に流されてしまい、肝心の報酬が手元に残らないこともしばしば。調査費用は1日12万円からです。

 

◆特徴タグ

・探偵物

・ハードボイルド

・ノスタルジック

 

 ◆感想と評価

ドラマながらベルリン国際映画祭に出品するほど。各話で別々の新進気鋭クリエイターをに採用しており、行定勲石井岳龍中島哲也アレックス・コックスなど、枚挙に暇がない。また、フィルムで撮っており、印画紙に焼きついたような質感を生んでいる。

毎回変わる豪華な俳優陣も話題であった。また、音楽に対するオマージュに溢れており、作品の雰囲気にあったサウンドトラックも必聴である。

 

◆オススメ度:★★★★★★☆

センス、芸術性、ストーリの面白さ、ナンセンスさ、どれをとっても優れている。ただし、マジでよくわからないシーンがいくつかあるのもご愛嬌。

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映画列伝5 かぐや姫の物語

今回は、高畑勲の名作「かぐや姫の物語」を紹介。

 

◆あらすじ

昔、竹取のがいた。ある日、翁は光り輝く竹の中から、手のひらに収まるばかりのかぐや姫を見つけ、自宅へ持ち帰る。姫はみるみるうちに成長してゆき、「天からの授かりもの」として育てられる。

やがて姫は可愛らしい快活な少女となった。一方、光る竹から黄金や豪奢な衣を授かる奇跡が起こったため、翁は、彼女を高貴な姫にさせるという天命を授かったと確信した。

都の貴公子に見初められるべく、都に屋敷を建てて、一家で移り住む。

しかし、都での生活は姫にとって窮屈であった。行儀作法の修行も嫌々ながらであった。ある出来事に端を発し、屋敷を飛び出して装束も脱ぎ捨てながら走り続け、故郷の山にたどり着く。時は冬。生い茂っていた木々は見る影もない。しかし、村人が言うには、木は芽吹きの季節を待っており、今はじっと耐え忍んでいるのだという。

 姫は都に帰ってからというもの、修行中にふざけなくなり、行儀よく振る舞うようになった。春、彼らの屋敷の前には、姫を妻に迎えんとする多くの男であふれた。やがて5人の公達(車持皇子・石作皇子・阿部右大臣・大伴大納言・石上中納言)までもが求婚に訪れる。彼女を珍しい宝物に例えて褒める公達に対し、姫は、自分への思いの強さの証として、引き合いに出された宝物を各公達に持参するよう要求した。

3年後公達が現れたが、贋物であったり、姫の関心を引くために虚言を弄したことが暴露される。これに嫌気をさした姫。さらに、宝物を得る過程で石上中納言が事故死してしまったことで、姫は自らを責め悲嘆する。

これだけで事は終わらなかった。世に名を轟かせる貴公子を手玉にとる姫を、御門は宮中に招こうとする。彼女はこれを拒み、月夜には一人で空を見上げるようになった。彼女がここにいたくないと思ってしまった時、悲しい運命が動き始め・・・

 

姫の犯した罪と罰が明らかになる。

 

 ◆特徴タグ

・古典

人間と穢れ

・泣ける

 

 ◆感想と評価

日本の四季折々の自然の中で育ち、時に荒々しく感情を爆発させ躍動するかぐや姫を、一人の人間としてビビッドに描いた作品である。水彩で描かれた美術が、白を基調とする背景の中にあって美しく融合している。

2018年4月5日、肺がんのため高畑勲は死去。この作品が遺作となった。採算を度外視する心意気と矜持を買いたい。

 

◆オススメ度:★★★★★★☆

 エンターテイメント性以外に関しては、ジブリ最高傑作と言って良いだろう。

かぐや姫の物語 [DVD]

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漫画列伝7 シガテラ

今回は、古谷実の名作シガテラを紹介。

 

◆あらすじ

高校生・萩野優介は同じクラスの谷脇にいじめられていた。彼の親友・高井も萩野同様いじめの被害にあっており、2人はスクールカーストの最下位として、くすんだ毎日を送っていた。

そんな凄惨な高校生活を救っていたのが趣味のバイクだった。

萩野は免教習所に通いバイトもはじめた。そんなとき同じ教習所に通う1つ年上の女子高生・南雲に好意を寄せる。美人でスタイルもよく勉強もできる彼女に劣等感を持ちながらも、なんと2人は付き合うことになる。いわゆる”リア充”として順風満帆な人生に向かって行くはずだったが・・・

そんな中、

親の会社が倒産し、学校をやめる高井。

ネットで殺人を依頼された犯罪者に、命を狙われる谷脇。

自分やその周りで様々な不幸が起こり始める。

高井や谷脇に浴びせられた言葉で、自分がむしろ不幸の発生源なのではないかという、言い様のない不安に駆られてしまい・・・

 

◆特徴タグ

・日常と狂気

・青春

・大人になる

 

 ◆感想と評価

日常と狂気のバランスが絶妙に描かれており、読む者を引き込む。そして、到達に現実に戻されるかのような、ラスト。大人になった主人公は、何を失って何を得たのか。考えずにはいられなくなる。

 

◆オススメ度:★★★★★★☆

古谷実の他の鬱漫画に比べると、はるかに読みやすく、比較的明るく軽快なストーリーである。

 

映画列伝4 マンチェスター・バイ・ザ・シー

今回は、ケネス・ロナーガンの名作「マンチェスター・バイ・ザ・シー」を紹介。

 

◆あらすじ

 

ボストン郊外で便利屋をするリーは、無気力で荒んだ生活をしていた。

そんな中、兄が死んだとの知らせが。みんなから好かれ、頼りになる兄を慕っていたリーは、故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーへと向かう。すると思いもよらぬ兄からの遺言。

 

「この地で、16歳の息子パトリックの後見人をしてくれ」

 

・・・。

リーは昔引き起こしてしまったある暗い過去のため、この町にとどまるわけにはいかないのだった。今まで以上に過去の呪縛と罪の意識に囚われて生きなければならない、あまりにも苦痛なこと。

しかし、パトリックは若く、魅力的な少年だ。パトリックと暮らす新しい生活は、リーにとっては未来そのものだ。彼は渋々ながらも同居の道を選んだ。

 

ある日、別れた元妻と出会う。ベビーカーには赤ん坊がいる。リーに再び凄惨な過去の思い出が去来する。やはり彼は過去の呪縛から逃れられなかったのだろうか?

堪えきれなくなったリーは、パトリックとの同居に終止符を打とうとするが・・・

 

 ◆特徴タグ

・呪縛と贖罪

人間性の回復

・泣ける

 

 ◆感想と評価

主演のケイシー・アフレックの好演が光るヒューマンドラマ。特に、元妻にあった際の表情や言動のリアリティには、目を見張るものがある。

視聴者は、過去と未来と向き合うことになった主人公の選択を、ドキドキして見守り、感動のクライマックスを迎えることになる。

余談だが、ケイシー・アフレックの過去の性的暴行疑惑が問題になっている。

 

◆オススメ度:★★★★★★☆

 サウンドトラックも哀愁を誘う。是非。 

マンチェスター・バイ・ザ・シー

マンチェスター・バイ・ザ・シー

 
Manchester by the Sea (Original Soundtrack)

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漫画列伝6 ドラえもん-ケンちゃんの冒険-

今回は、ドラえもんの絵本漫画である「ケンちゃんの冒険」を紹介。

 

◆あらすじ

のび太のクラスに転校してきた車椅子の少年・ケン一ことケンちゃん

ケンちゃんの趣味は大好きな蝶の標本をコレクションすること。しかし、蝶は全て店で買ったもので、自分の手で蝶を採ったことは一度もないという。

のび太は蝶をこの手で採ってみたい、というケンちゃんの願いを叶えるため、いつもの仲間とケンちゃんを連れ、タイムマシンに乗って3000年前の新生代へと飛び立つ。

そこには、目もくらむほど美しくいたくさんの蝶がいた。

しかし、羽で縦横無尽に飛び交う蝶を捕まえるには、自分の足で立って彼らを追いかける必要があり・・・

 

 ◆特徴タグ

・福祉教育用資料

・ふれあい

・自己成長

 

 ◆感想と評価

1981年の国際障害者年記念のキャンペーンとして制作された絵本であり、点字の打点、「凸印刷」によるイラスト表現などの工夫が凝らされている。

また、絵本とほぼ同時期に映画も作成されており、学校教育や福祉施設で積極的に活用された。

付録にあるふれあいエチケットブックでは、健常者&障害者両者の視点から、お互いに対するマナーや気遣いを説明している。

また同本の特色として、ハンディキャップを口実に漫然と生きることを”甘え”と否定しており、障害者に積極的な自立を促す内容となっている。

 

◆オススメ度:★★★★★★☆

上記評価にもある通り、福祉教育の観点から非常に価値のある作品である。

ただし、通常販売されていない作品のため、個人で入手するのは難しいかもしれない。図書館や公民館、学校施設などで探すと良いだろう。